12月20日、”邑南町の交差点でバス同士の事故が発生、多数の傷病者が当院へ搬送されてくる”という想定のもと災害訓練を行いました。

 訓練は災害救急委員会が計画担当し、DMATの研修を終了している田邊翔太総合診療科医長が中心となって、訓練のシナリオ、約70名の被災者リスト、担当者の配置、各部署の役割分担などの全指揮をとりました。

 訓練前に説明された、災害時に重要な3つの”T”

 大規模災害時には、平常時の病院の運用では対応できないほどの多数の患者さんが来院されます。その時に重要なのは、患者さんをトリアージ(Triage)し、適切に処置(Treatment)し、治療可能な病院に搬送(Transport)することです。この3つの”T”が迅速かつ的確に行なえることが災害医療の鍵であり、この訓練のポイントとなると田邊医師から説明がなされました。

 トリアージとは、患者さんを重症度別に分類し、重症の患者さんから優先して治療していく方法です。当院の機能(医療スタッフや器材、医薬品など)にも限りがあり制約された状況下で1人でも多くの傷病者に最善の治療を行うため、このトリアージはとても大切な作業となります。

 実際の訓練では、次々に押し寄せる患者さんの対応だけでなく、トリアージ後の急変や迷子になった子の保護者の捜索、事故以外の患者さんの急患など、現場を混乱させるさまざまなシナリオが用意されており、現場には臨場感があふれていました。設置された災害対策本部も空気が張り詰め、急きょ本部長の判断により災害現場へDMATの派遣を指示するなど、実際に近隣で大規模事故が発生した時を想像した本番さながらの訓練となりました。

 DMAT(Disaster Medical Assitance Team)とは 災害現場に派遣される医療チームのことです。

田邊医師による事前説明会の様子
田邊医師による事前説明会の様子

患者さんがどんどん押し寄せるトリアージ現場
患者さんがどんどん押し寄せるトリアージ現場


処置を行うトリアージ黄色の現場

 実際の患者さんの代わりに、写真のようなラミネートされた紙を使用しました。紙には、患者さんの状態やおよその年齢、性別、衣類の特徴などが記載されており、それを見て処置の判断をしなければなりません。ストレッチャーや車イス、点滴、酸素、人工呼吸器、AED、エコー、心電図などの紙も当院にある数量のみが用意され、現場で足りなくなるとどこにあるか探しお互いに共有しなければなりませんでした。

緊迫した様子の災害対策本部
緊迫した様子の災害対策本部

訓練後、院長による講評
訓練後、院長による講評

 医師、看護師、検査科、薬剤師、総務課等それぞれ職種の違うスタッフが、少ない人数の中でいかに協力していくかを体験でき多くを学ぶことが出来ました。

 訓練最後に「混乱する状況の中でいかに迅速で正確な情報共有ができるかが大事であり、その訓練は毎日の業務にある」という院長の言葉がスタッフ全員の心に響きました。毎日の業務の”ほうれんそう(報告・連絡・相談)”の大切さを改めて実感した訓練となりました。

 この災害訓練は「災害は忘れたころにやってくる」のではなく「災害はいつやってきてもおかしくない」と、訓練の全指揮を担当した田邊医師の言葉でスタートしました。「災害はいつやってきてもおかしくない」という心構えのもと、緊急時にすみやかに対応できるよう、今回の反省や気付きを活かして対策を講じると共に訓練を重ねていきたいと思います。